- 自分の夢に忠実にまっすぐ進んだ人物を描きたいのである。
- 夢は狂気もはらむ、その毒も隠してはならない。
- 美しすぎるものへの憬れは、人生の罠でもある。
- 美に傾く代償は少なくない。
(『風立ちぬ』公式HPより)
航空機設計者。
堀越二郎。
青年時代。
貧しさを共有していた美しくも酷い日本。
設計。
設計は決断と線の集積だと思う。
同じようなことをよく言われるうちに自分でもそう思うようになった。
なされた決断とひかれた線の集積を見えない根っこで支えているのは、
採られなかった選択肢とひかれなかった線。
さらにそれを支えている、あるいは取り囲んでいる土壌になっているのは、
知識や経験もさることながら無数の逡巡と葛藤。
『風立ちぬ』の中の堀越二郎にはそれが直接的、選択的には描かれていない。
描かれているのは何か。
青年、だと感じました。
青年。
少年と壮年の間。
未成熟と成熟の間。
希望と諦観の間。
無知と無知の知の間。
つぼみと枯れたものの間。
空に向かって開花。
今の時代の日本にこういう青年はいるのでしょうか。
僕はといえば、
青年にしてはナイーブで無知で、
かといって小賢しい諦観を携えている気もする。
ここで描かれる青年とはだいぶ違う。
まっすぐで忠実であること。
まっすぐかつ忠実。
これはとても難しい。
村上春樹の一文一文がそうであるように、
一枚一枚の画が、
高級な嗜好品のように味わい深かったです。
特に緑と茶色。