津波に被害を受ける街の映像に衝撃を受けました。
それは完全に想像を超えていて、僕が津波を侮っていたことを証明しました。
僕に実際的あるいは大々的なことはできませんが、いてもたってもいられなくなりました。地震発生の翌日の朝、本屋へ行って津波についての本を探しました。昨年の秋に講演でお話をきいた河田先生の本を見つけたのでこれで勉強してみることにしました。
僕は津波の理学やこれに対抗する工学、あるいは減災や防災について素人ですが、その素人でも分かり、そして実用的と思われる知識を以下に5点あげたいと思います。これらが必ずしも正確で正しいか僕には判断できませんが、知っておくことは有益だと確信しています。(“ ”内は引用で、それ以外は僕の私見です)
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1.震度6弱から6強で、1分以上揺れたら間違いなく津波はやってくる。
“大津波が来襲するところは、地震の震度も6弱から6強であるから、素人判断しても間違うことはない。一分以上、三分程度揺れたら間違いなく津波がやってくる。”P.106
2.海岸護岸や堤防を信じてはいけない。
“一般に海岸護岸や堤防は、そこにやってくる津波を考慮して作られていない”P.28 “だから、海岸護岸や堤防が海側に設置されていても、大津波警報が発令されたら、とりあえず避難しなければならない”P29 “津波が護岸や堤防にぶつかった瞬間、津波の運動エネルギーがゼロになり(中略)、これが瞬時に位置エネルギーに変換され、海面が盛り上がるのである。理論的には衝突前の1.5倍くらいに高くなる。(中略)このような理由から、海に面して高い護岸や堤防があるからといって、大津波警報が出ても避難しなくてもよいと考えるのは早計である”P.17 ※大津波警報は高さ3メートル以上になる危険がある場合
3.木造2階建てから、鉄筋コンクリート造3階建てへ。
“浸水深が二メートルになり、そのときの流速がおよそ毎秒四メートルを越えると、住宅は浮上し、流され始める”P.56 “もし、二メートル以上の浸水深が予想される地域に木造住宅が立地している場合には、二階に避難することは危険である。”P.57 “鉄筋コンクリート造の建物は、(中略)2004年インド洋大津波で(中略)三階建ての鉄筋コンクリート造のホテルに高さ10メートル(そのときの流速は、毎秒8メートル)の津波が来襲した後(中略)鉄筋コンクリートの柱は十分破壊に耐えている”P.57 流速は僕たちに実感として分かりにくいので、浸水深さが高くなってきそうなら避難を考えるようにしておくのがよいと思います。
4.地震の揺れの大きさと津波の大きさは必ずしも連動しない。
“1986年の明治三陸大津波で死者が2万2000人に達した(中略)。これだけ犠牲者数が多くなったのは、この地震が津波地震(地震の揺れが小さいにも関わらず、津波が非常に大きくなる地震)だったからである。(中略)5メートル以上の津波がやってきた集落では、80パーセント以上の住民が犠牲になっている。”P31 言うまでもないが、これは3.と矛盾するものではありません。ではどこで津波が来ない地震と判別するのか。それは「揺れが長く続く」ということがひとつのポイントだと思います。そしてテレビやラジオの地震情報を聴くこと。
5.津波は逃げるが勝ち。
“津波の高さが高くなるにつれて、早く逃げた場合と逃げなかった場合の死亡率の歴然とした差が存在する(中略)。早く避難すれば、100人の住民中、一人の犠牲に留まる一方、避難しない場合には、90人以上の犠牲になる(中略)。津波は「逃げるが勝ち」なのである。”P.120
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河田先生は、この本の中で当然避難の方法についても言及されています。もちろんそれも大切なのは間違いありませんが、それをここで紹介していないのはとにかく津波がまずは「避難することが最も大切」だからです(河田先生もそう言っていると思います)。本書のまえがきで、先生はこの本を書くきっかけとなったのは記憶に新しい2010年2月に発生したチリ沖地震津波だと述べています。このとき、約186万人に対して避難指示・避難勧告が出されましたが、避難した人はわずか3.8パーセントだったそうです。正直いって、この3.8という数字は3日前まではそれほど僕たちに迫ってくるものではなかったかもしれません。
でももうそういうわけにはいきません。僕たちは学んでいかなければなりません。
願わくば、この記事を読んでくれたみなさんが、ご自身でこの本を手にとって学んでいただければと願います。そうでなくても地震や津波や原子力、防災に関する知識を得て、未来へつなげることが、僕たちにできることのひとつであると考えます。
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