坂口恭平サンのことは1年くらい前から何かで読んで知っていて『隅田川のエジソン』も途中まで読んでいました。
特につまらないというわけでもなかったのですが、一気に読んでしまうほどおもしろいとも感じなかったので、途中で別の読みたかった本に乗り移ってしまったような記憶があります。
でも、この『独立国家のつくりかた』(上の写真は坂口サンのHPより)はとてもおもしろかったです。
自らを新政府総理大臣と名乗る坂口恭平サン。
これはふつうに聞けば、どう聞いても冗談です。
冗談でなければパフォーマンスだと。
どうやらそういうわけではない、ということがだんだん分かってきます。
いや、冗談といえば冗談だし、パフォーマンスといえばパフォーマンスかもしれません。
でも、ただの冗談でもないし、ただのパフォーマンスでもありません。
大真面目は大真面目です。
そういうことが読んでいるとおおいに分かってきます。
どうやらこのお方は本気らしい。
言っていることは全うですが(少なくとも僕にとっては)、ぶっとんでいます。
ぶっとんでいるけど、きちんとことばにされている。
さらに僕の志向に合致している。
だからおもしろい。
たとえば“態度経済”。
― 自分が実現したい行動を、自らの態度を示すことで実現させる経済の在り方を、
― 僕は「態度経済」と名付けた。
― これまでの貨幣経済、資本主義経済ではなく、
― 態度をもとに人々の交易、貨幣の交易を実現する経済。
(中略)
― モノの交換ではなく、態度の贈与によって発生する経済なのだ。
(P.93)
貨幣をやりとりするわけではなく、出来事をやりとりする経済といったところでしょうか。
それが“交易”ということばにもあらわれているんだと思います。
出来事をやりとりするためのツールが貨幣ではなく、態度(これは“その人”と言い換えてもいい)であり、そこに付随的にお金やモノが発生する経済。
僕は上でも言ったように、これに志向として共感するのですが、坂口サンはみんながこうあるべきだ、あらねばならないということを言っているわけではありません(たぶん)。
「新しい経済を考えよう」と言っているのです。
もっといえば経済でなくともよい、「考えよう」と言っているんだと思います(そして、試してみよう、と)。
(Twitterでも言っているのですが、自分の頭で考える、というのはほんとうに難しいと最近よく感じます)
これはもちろん坂口さんの代名詞のようになっている「0円ハウス」につながっています。
1000万も2000万もそれ以上もする家を建てて(あるいは買って)、それを払うために働くというのは何かおかしいよね、と思う人は少なくないでしょう。
僕は今でも思っています。
そんなに高いお金を払う家って必要なの?
いや、そもそもそんなに建物って建てる必要があるのか?
僕の職業は建築構造設計なのでこんなことをいうとよくないのかもしれませんが、そういう思いは大学で建築を学びはじめた時からずっとあります。
今はまだ暫定的な答えすら見つけられていません。
でも、どうやらやっぱり(というべきか)、そんなに高いお金を払う家は必要ないし、そんなに建物を建てる必要もないようです。
これは明らかに『独立国家のつくりかた』を読んで受けたことばなので、自分で自分のことばを探さなければなりませんが、たしかに少しの励みになりました。
自分のやりたいことなんてどうでもいい、自分がやらなきゃ、と思うことをやれ、ないなら探せ、見つからないなら捻出しろ(P.162/そこまで坂口サンは言っていないけど)、というのは僕はまさにその通りだと思うし、「疑問」を「問い」にすることこそが創造だ(P.164)、というのもそう。
自殺念慮があるけど、多くの人が応援してくれているし、死ぬわけにはいかない、つまり、死ねない。これがすなわち「生きる」ということだ(P.168)、というのは僕が考えていることと少し違って、再考を促されました(僕に自殺念慮はありませんが、いつ死んでも悔いはないとぼんやりと思っていました)。
絶望することについての積極的なとらえ方(P.181)は、僕の目を拡げてくれたようです。
などなど、このへんにしておきますが、とてもよい本でした。
誰も言わないことを言う。
言うにはことばにしなければならない。
誰も言っていないから自分で考えないといけない。
考えるのにハードルがあって、ことばにするのにさらにハードルがある。
こういう仕事をする人というだけで僕は興味関心をひかれるのですが、さらに僕の志向とおおむね同方向のようなのでとてもヒントになります。
要注目人物になりました。
さて、本日から平成25年度です。
大学を卒業して、3年で市役所を辞めて、大阪に来て構造設計をはじめて丸4年が経ちました。
大阪に来るとき、5年で帰ってくる、と僕は言いました。
その最後の年です。
時間はあまりありません。
がんばろう。
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投稿情報: www.dietasdeadelgazar.info | 2013/10/07 02:23